(14) 2/21(土) 三品浩基 13:00~16:00
児童虐待防止、地域の小児科医からできること
第14回 2月21日 13:00~16:00
「児童虐待防止、地域の小児科医からできること」
三品浩基先生にお話いただきました。
神戸常盤大学保健科学部医療検査学科准教授
小児科医/公衆衛生学修士
公衆衛生を専門にしている小児科医で、
普段は乳幼児健診、予防接種に携わっておられ
研究分野は産後うつ病のスクリーニング、
および児童虐待の予防について研究され、
大学では疫学、公衆衛生学全般を教えられているそうです。
かなり専門的なお話と、参加者からの質問に
ていねいに答えていただきました。
印象に残った部分をお伝えします。
(くわしい内容については、報告書をご参照ください。)
児童虐待の要因として、
WHOが提唱しているリスク因子の考え方のモデルは、
虐待は社会の問題である
よりマクロなレベルで家族のレベル、地域のレベル、
社会のレベルでも要因が潜んでいる為に虐待に至ってしまう。
個人要因とそれを取り巻く様々なレベルの環境要因、
これらが重なる時に虐待が起きてしまうという
考え方があるそうです。
社会関連資本を英語でソーシャル・キャピタルといい、
地域住民の交流・信頼・社会参加
これらが盛んに行われている地域では
虐待が少ないと指摘されています。
日本では、虐待による死亡が大きく報道されており
虐待死は年間100人前後で横ばい状態のものの、
児童虐待相談対応件数は急激に上昇しているのだとか。
イギリスの研究から、
1つ死亡事例があるとすると
その150倍、150人は死に至らないが
普段から虐待を受けている子どもがいるのではないかと
言われているそうです。
「産後うつって育児不安やマタニティブルーのこと?」
といったうけとめ方をされがちですが、
育児不安は、を明確に定義するような基準はなく、
医学的な状態を表す概念ではないこと。
マタニティブルーズは、産後数日から10日前後に掛けて
現れる気分の落ち込みで、一過性の気分変調で、
自然に治るもの、
だいたい約半分のお母さんは
このマタニティブルーズを体験すると言われています。
周産期うつ病・産後うつ病は、
産後1年以内に生じ、
2週間以上持続し、なかなか治らないのが特徴で、。
医学的診断による病気です。
だいたい1割~2割のお母さんが発症され、
その発症時期として、産後早期には大丈夫でも、
4ヶ月、8ヶ月健診で初めて抑うつを指摘されることも
あるだそうです。
産後のお母さんのうつ傾向を
エジンバラ産後うつ病自己調査票を用いてはかることを
産後早期の家庭訪問事業の中に導入している
自治体が多いところから、その地域的相関を研究された結果
産後うつ傾向の割合が高い地域ほど
虐待認定割合も高いという事が判りました
近年、二質問法といって
抑うつ気分と興味の減退の2項目を聞くだけの方法で、
相当な診断精度があるという研究成果がアメリカで報告され
海外では導入されつつあるとのこと。
今後は、どういう支援を行っていったらよいか
軽症であれば、家庭訪問、育児相談、環境整備
中等症であれば、治療介入、精神療法、薬物治療が
必要になるように、
重症度によって関わり方が変わってくるという認識
も大事です。